2009/07/06

This Week's Recommendation from Acclaim Collective (A): Chumbawamba - Anarchy CD

CHUMBAWAMBA - Anarchy CD

言わずもがな UK のアナキスト・パンク・バンド "Chumbawamba" が EMI と契約する以前の94年にリリースした (たしか) 6枚目のフルアルバム。リリースしたのは、同郷のインディペンデント・レーベル "One Little Indian Records" (ex-Spiderleg Records from Flux of Pink Indians)。

そして、本作は、かれらが80年代後期より UK のレイブ・カルチャーに洗礼を受け、従来のアナーコパンク路線から、本作で聞かれるようなポップ/ダンス・ミュージック路線にサウンド・スタイルをチェンジしてからの最高傑作と言っていい。いや、Acclaim Collective (A) (以下 Acclaim) にとって、Chumbawamba とは本作とさえ言ってもいい (それと85年リリースのデビュー・シングル "Revolution" 7" だろう)。とはいえ、彼らが結成以来、大きな「成功」を収めたのが、事実、本作なのである。 "Timebomb" (時限爆弾)、 "Homophobia" (ホモフォビア)、"Enough Is Enough" (もうたくさんだ) といったヒット・シングルはさることながら全曲捨て曲なし。Chumbawamba 流の最高のポップ/ダンス・ミュージックが詰まっている。

ゆえに、かれらのサウンド・スタイルはある意味「大衆的」になった。だが、本作は、「普通の人々」の「現実」を繋ぐ大きな意味でのストロングな政治性をいまだ見せつけた作品でもあったのだ。とりわけ、同郷のヒップホップ・デュオ "Credit to the Nation" の MC Fusion とコラボした "Enough Is Enough" には熱くならざるをえない。この "Enough Is Enough" は、"Open your eyes - Time to wake up - Enough is enough is enough is enough" (目を開け - 目覚めるときだ - もうたくさん、たくさんだ) のフレーズで有名なアンティファ (反ファシズム)・ソングである。この曲がシングルとしてリリースされた93年当時のイギリスでは、「外国人排斥」を掲げたイギリス国民党 (BNP) と呼ばれる (ネオ) ナチ政党が台頭し、議席獲得のために選挙戦を展開していた。それは、イギリス国内にファシズムの気運が異常に高まった時代でもあった (今なお続いていることは言うまでもない)。つまり、この曲はかれらが本気で「やつら」を止めようとした曲なのである。さらには、MC Fusion とかれらというこの両者 (黒人と白人) が手を組んだ意義も大きい。

最後に、なぜ Acclaim にとって本作なのかを説明しておきたい。
それは、Acclaim が、かれらがデビュー・シングル "Revolution" 7" の "Adversity" (逆境) のなかで歌った "The music's not a threat. Action the music inspires can be a threat!" (音楽は脅威じゃない。音楽が喚起する行動は脅威になるかもしれない!) を、本作からおおいに感じているからである。「スタイル」としてのパンク・サウンドを打ち破ったサウンド (それがいいと言っているわけではなく、たんに「それだけではない」を示したという意味)、そして、「もうたくさんだ」と歌う "Enough Is Enough"、「私は時限爆弾だ」と歌う "Timebomb"、「同性愛嫌悪は最悪な病気だ」と歌う "Homophobia" などの (先に述べたように) 「普通の人々」の「現実」を繋ごうとする姿勢の結実は、 そのことを説明するに十分である。だが、Acclaim はそれが「より多くの人々にアピールする」という意味では言っていない。たんに本作からパンクの「力の配分」の無限性をひしひしと感じるというだけである。これはもうひとつの「成功」とも言えるだろう。ゆえに本作なのである。もう多くは言うまい。今となっては入手しやすい作品ではないが、とにかく機会があれば聞いてみてほしい。

1. Give the Anarchist a Cigarette
2. Timebomb
3. Homophobia
4. On Being Pushed
5. Heaven/Hell
6. Love Me
7. Georgina
8. Doh!
9. Blackpool Rock
10. This Year's Thing
11. Mouthful of Shit
12. Never Do What You Are Told
13. Bad Dog
14. Enough Is Enough
15. Rage


Released by One Little Indian Records (1994)

Chumbawamba - "Enough Is Enough"


追記 : かれらはこの後、自らも攻撃していた EMI と97年に契約する。そしてその EMI から世界的大ヒットとなったシングル "Tubthumping" 及びアルバム "Tubthumper" をリリースし、各方面から非難を浴びることになる (UK の D.I.Yパンク/ハードコア・レーベル "Ruptured Ambitious / Propa Git Records" が "Bare Faced Hypocrisy Sells Records" - The Anti-Chumbawamba comp 7" を98年にリリースしたのは有名である。参加したのは、Riot/Clone、Anxiety Society、Oi Polloi、The Bus Station Loonies の4バンド)。しかしながら、ここではこのことに関して割愛する。本当は割愛できないが、それはまたいずれ。

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