2009/06/25

Abuso Sonoro interview

埋もれていた D.I.Yパンク/ハードコア・バンドのインタビュー紹介第2弾。

今回は、1993年に結成されたブラジル・サンパウロの重要なアナキスト・パンク・バンド "Abuso Sonoro"。かれらの名前を聞いて、なつかしいと思った日本のパンクスもいるかもしれない。2001年にリリースした split 7" with No Violence 以降、かれらには作品のリリースがなく、活動の詳細があまり分からずにいた。しかしながら、かれらの Myspace によれば、今年の3月に Reunion Show を行った模様。他のメンバーが別のバンドをやっていたということもあり、「一時休止」していたのかもしれない。

紹介するインタビューは、いわずもがな US の "HeartattaCk"
2000年の春に行ったもので、その第27号に掲載された。質問の内容は、結成にいたる理由から、「アメリカ至上主義」、サパティスタ・ムーブメント、警察の暴力に反対すること、さらには、パンク/ハードコア・シーンにおける女性についてまで非常に多岐にわたる。そしてそれに対して真摯に答えるかれら (答えているのは、ベーシストの Angelo とメンバーの中で女性であるヴォーカリストの Elaine)。本当にいいインタビューとなっている。

Acclaim Collective (A)  もかれらには多大なインスピレーションを受けている。これもまた埋もれたままにさせておくのはもったいない。


Abuso Sonoro interview from "HeartattaCk #27" zine (Spring 2000)

ABUSO SONORO は、1993年に結成されたブラジルのアナキスト・パンク・バンドだ。かれらの最初の音源は、ブラジルの Low Life Records からリリースされた 7" "Jogo Sujo" であった。それ以降、5枚の 7" と2枚の split LP を発表している。本インタビュー時における最新作は、Elephant Records/Absurd Records から発表された Wojczech との split 7" と、Amor, Protesto Y Odio との split LP だ。ABUSO SONORO は他のラテンアメリカの DIYバンドが成し得なかったラテンアメリカ及びヨーロッパ・ツアーを敢行した。現在、かれらは Six Weeks との共同によるフルレンス・アルバムの製作に取り掛かっている。このインタビューは2000年春にインターネットを利用して行われた。 - Mike Mckee

HeartattaCk :
ABUSO SONORO はどのくらい活動を続けていますか? どうやって結成したのですか?

Angelo :
俺たちは92年から活動を続けているんだけど、何度もメンバーチェンジがあったんだ。今のラインアップは、Angelo (B)、Elaine (Vo)、Arison (G&Vo)、Rui (G)、Juquinha (Dr)。俺たちはハードコア/パンクをプレイし、俺たちにとって重要だと信じていること (例えば、ホモ恐怖症や性差別、雨林問題、動物解放問題) について皆と話をしたかったから、バンドを始めたんだ。ただ、俺たちはアナキスト・バンドである以上、すべてに対してアナキストの観点から表現しようと思っている。

HaC :
誰が歌詞を書いているんですか?

A :
Arison が一番多く書いてる。俺と Rui もよく書いてるんだけどね。Elaine も少し。まだリリースされていない作品には、Juquinha が書いた歌詞もあるんだ。俺たちはパンクを政治的な音楽だと信じているから、バンド結成当初からずっと政治的な歌詞を書いてきた。パンクをただの音楽と思わないし、鋲ジャン着てるからってパンクだとは思わない。パンクは一つのライフ・スタイルであり、反体制文化なんだ。自分の生活を改め、既成概念を打ち破り、女性、男性、子供、同性愛者、動物、異なる民族がすべて平等に生きていける世界を実現するために闘うことだと思ってる。でも、このことを直接歌ったり書いたりするだけなら、俺には満足できない。なぜなら、俺にとって本当の闘いは、日々パンクであり続け、真の革命を成し遂げるために努力することだからなんだ。

HaC :
バンドに所属することが、なぜあなたたちにとって重要なのでしょうか?

A :
俺にとってバンドは、俺たちが感じていることを表現する手段なんだ。俺はパンク・ミュージックやパンクに関わるすべてが大好きだ。でも、俺にとってそれは永遠に続く気持ちではない。俺は俺の人生に残された時間をアナキストとして生きていきたいんだ。俺は今後も自分がパンクであり続けるか、あるいはミュージシャンであり続けるかは分からない。俺は今30歳なんだけど、今でもバンドでプレイすること、ツアーすること、そこで多くの人々と出会うことが大好きだ。俺はここ数年、多くの友人を作ることができ、想像もしなかった土地について知ることもできた。でも、一度立ち止まって新しいことに挑戦することも悪くないと思っている。ちょうど世界中の人々がその存在に気づいたときに活動を停止してしまった Los Crudos みたいに。

HaC :
あなたたちから以前お聞きした話から、ブラジルは経済的に生活しづらい場所のように思います。ツアーも大変なのではないでしょうか? ABUSO SONORO の南米ツアーで、あなたたちは素晴らしい経験をしたと同時に、お金に大変困ったとも聞いています。それに引き換え、欧米のバンドが海外ツアーに出向き、報酬を得ることは非常に簡単なように感じます (ときには大金も!)。Agnostic Front のようなバンドは、非常に恵まれた環境で海外ツアーを行います。その一方、アメリカやヨーロッパといった海外のバンドが、ブラジルの地元のシーンに大きく貢献することは無いように思うのですが、あなたはこれについてどう考えていますか? ラテンアメリカのパンク・シーンにおいて、「アメリカ至上主義」が存在しているように感じてますか?

Elaine :
なんとも言えないわね・・・。多くのバンドがヨーロッパをツアーし、大金を手にしているわ。そして、ブラジルもヨーロッパと同じようなものよ。Agnostic Front や Offspring なんかは、ブラジルでツアーでやってきて簡単に大金を手にするの。

そうね、「アメリカ至上主義」はたしかに存在するわね。私たちはずっと植民地扱いされっぱなしよ。人々はいつも地元のバンドより海外から来るバンドをサポートするの。

でも、Los Crudos がブラジルにやって来たとき、私たちは DIY の方針に従ってかれらをサポートしたわ。ブラジルではほとんどのギグは2ドル以下なの。私たちがヨーロッパのバンドをサポートする場合、チケットの値段を2.50ドルに抑えるの。でも、人々は地元のバンドを見るのに2ドル以上払いたがらないのに、アメリカのバンドには5ドルも10ドルも払うの。ギグだけじゃなくて、レコードなんかにも同じコトが言えるわね。シーンの人間は地元のシーンをサポートしているとは言えないわ。私はアメリカやヨーロッパ、カナダ、メキシコなんかの多くのバンドが大好きなんだけど、だからといって、地元のシーンをサポートしなければシーンは潰れてしまうわ。

HaC :
あなたたちのいくつかのレコードーー特に "Ja Basta!" 7" において、ABUSO SONORO はサパティスタ・ムーブメントについて歌い、そして公然と EZLN を支援しています。サパティスタ・ムーブメントはブラジルの人々にとって何だったのでしょうか? ラテンアメリカをツアーして、何らかの変化に気づきましたか?

A/E :
そうだな、かれらがメキシコで関わった革命は、これまでのマルクス主義者/レーニン主義者/毛沢東主義者の革命とは違ってアナキズムに近いイデオロギーのもとに達成されたという点で、すべての左翼運動にとっても重要なものだったと思う。ブラジルには、Sem Terra 運動がある。この運動は、土地、敬意、威厳、そして資本主義社会で生き残る方法を獲得するための農民による運動なんだ。運動に参加している人々は革命を目指した生活をしているんだけど、今現在は非武装なんだ。ラテンアメリカでは他にも、コロンビアの FARC やペルーのトゥパク・アマルなんかがあるんだけど、かれらは伝統的なマルクス主義者やレーニン主義者であり、かれらの私設軍には多くの権力主義者やナショナリストが含まれている。でも、サパティスタ軍は違う。かれらは変革のために、ネオリベラリズム (新自由主義) 打破のために、平等主義の社会を実現するために闘っている。そして、かれらは政府に依存するのではなく、もう一度自活の道を切り開こうと試みているんだ。ラテンアメリカはネオリベラリズムを打破しなければ、2、3年で崩壊してしまうと思う。NAFTA や MAI、ALCA が主導する貿易形態は、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、メキシコのようなラテンアメリカの国を破綻させるだろう。

ラテンアメリカをツアーすると、生活を変えたいと望んでいる、失望に打ちひしがれた人々とよく出くわすんだ。かれらの多くはサパティスタ運動について少しは知っていて、インスパイアされている。でも、それはただのインスパイアであってはならない。ラテンアメリカの人々は常に独裁、インフレ、貧困などから生き残ってきた民族なんだ。だからこそ、俺たちは生活を変えるために、支配者や政府に対して闘いを始めなければならない。すべてのラテンアメリカ人が自由に生きていける日を迎えるために、俺たちは闘わなければならない。

HaC : アメリカでは、多くのバンドが政治的な問題について話します。かれらの多くは非常に誠実ですが、実際の活動に関与していることは稀です。例えば、多くのアメリカのバンドが警察の暴力に対して反対していますが、警察の暴力はほとんどの白人パンクス、中産階級のパンクスにとって現実的な脅威ではありません。他にも、アメリカの多くのバンドが政府の政策や政務に関して歌いますが、かれらの主張を実践したとしても危険が生じるようなことはありません。ブラジルの状況はどうでしょうか? あなたは、ブラジルのパンクスがアメリカのパンクスよりも問題に対してより直接的に対処しているように思いますか?

A :
もちろん! ブラジルでは警察の暴力は日常生活の一部なんだ。この国の政府は本当に忌々しいんだけど、それはアメリカでも同じだと思う。もちろん、白人中産階級でパンクであることはブラジルでパンクであることよりも簡単かもしれない。それは、ブラジルのほとんどのパンクスが労働者階級であるか、あるいは仕事を持っていないからだ。Abuso Sonoro がヨーロッパをツアーしたとき、俺は多くのパンク・バンドとスクウォットを見てきた。けれども、俺はかれらが「第三世界」の俺たちと同じ問題に直面しているかどうか分からない。いずれにせよ、俺は、アメリカのパンク・バンドが警察の暴力や貧困について歌うとき、それがかれらの生活と直接関係していなくても、かれらを誠実だと思う。なぜなら、パンクにとって大切な点は、システム、政府、ファシストに反対して闘うことなんだから。もし、パンクスが何も活動的なことをしないのなら、パンクである意味がないと思う。


HaC :
アメリカではパンク/ハードコア・シーンで活発に活動する女性が多くいるのですが、
残念ながら、女性シンガーは非常に少ないように思われます。多くの女性は、シーンにおいて対等でないように感じ、シーンに完全に受け入れられているとは思えないようです。ブラジルの状況はいかがでしょうか? あなたの経験/意見を聞かせてください。男性メンバーはバンド内の女性メンバーをサポートしていますか? あなたは今までに「パンクであること」と「パンク・シーンにおいて女性であること」との、いわば『二重のハミダシ』であるように感じたことはありますか?

Elaine :
最初はすごく難しかったわ。活動的な女性に出会うことはブラジ
ルでは、非常に珍しいことで、パンク・シーンにおいても例外ではないの。でもパンク・シーンには常に女性の居場所があるから、私はパンク・シーンに参加することを決めた。私は、女性がファンジンや音楽の制作、レーベル運営に携わるとき、女性にも権利が与えられているって感じるわ。私たち、ラテンアメリカの女性は自由を求め続けているし、多くのパンクスにもそれを知っておいてほしい。

たくさんの男性がファンジンやレーベル、パンク・コミュニティをサポートしているけど、その中には女性の立場を脅かすものがあるのも事実だと思う。そんなのは無くさなきゃいけない。いまだに自分のことを『二重のハミダシ者』だって感じることはあるけど、ここ数年でかなり改善されてきたようにも思えるわね。もしかすると、それは私個人が多くの失望を克
服してきたからかも知れないんだけど、私は今後もパンク・コミュニティにおける不公平を解消するためにすべての女性を支持していこうと思ってる。

それとパンク・シーンでの同性愛者に対する根強い偏見についても話しておきたい。数年前に比べれば大分マシになったと思うけど、依然、同性愛者への偏見は存在しているし、私たちは解決法を探しださなくちゃいけない。私には性的傾向を理由に人を差別する理由が分からない。なんで誰かの性的傾向が脅威になりうるの?


でも、ラテンアメリカのパンクスがこれを理解するのは難しいかもしれない。ラテンアメリカのパンク・シーンでは、同性愛者に対する不寛容や恐怖は本当に酷いものなの。私はこの原因を、カトリック教会の子供たちに対する抑圧的な教育のせいだと考えてるわ。カトリック教会の教育は、人間らしい欲望を否定し、性的傾向をコントロールし、不合理に私たちの心を抑制するものなの。パンク・コミュニティでは、異性愛が盲信されていると思う。この男性的な社会は、そこにいる人々に異性愛者であることを強要していると思うの。私たちは内側から外側へと変革を起こす必要がある。こんな不合理がまかり通ってる間、私たちはずっと抑制され続けるわ。

Abuso Sonoro: www.myspace.com/abusosonoro

Translated by Tomohiro Nishida (Terminal)

*The band photo was taken from their myspace.

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